15の夏、私は髪を剃り落とした。
目に映るもの全てが怖かった私は
崩れそうな自分に気合を入れた。
セーラー服に眩しいほどの丸刈り姿を
学校中の人間が窓ガラス越しに見てた。
一度気合いの入れ方を覚えると歯止めがきかず
私は手当たり次第のものを切り刻み始めた。
髪の次は両腕を刻んだ。
カッターで切った傷口から血が流れ
止まり、化膿して、そして傷口が閉じると
全ての罪が浄化され、強くなった気がした。
でも、体のどこにも真面な皮膚を探せなくなった頃
私は初めて<髪>が恋しくて泣いた。
泣いても泣いても、
私の頭には、つまめるほどの髪もなかった。
私は冷たい頭を、傷だらけの腕で抱いて泣いた。
夏の朝、目覚めると
ママはチャイコフスキーをかけながら
「早く学校へ行きなさい」と言った。
たっぷりと流れる赤毛を束ねながら
ママはゴキゲンだった。
私は靴をはきながら
ママを憎んだ。
15の夏、空は吐き気がするほど晴れていた。


bounce APRIL 1997










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