心から愛した人がいた。
私を抱いてくれた人がいた。
狂おしいほどの時間があった。
耳を澄ませば
息づく生命の予感があった。
優しい嘘が零れて川を創った。
深くうねる海の上を
私は何度も飛んだ。
残酷なほど鮮やかに甦る記憶たちは、
私が私であるための
大切な誇りだとも想ってきた。
でも時々
私は全てを忘れたくなる。
今まで歩いてきた道も、
その足跡も
流した血のにおいも
その色も
全てが跡形もなく
消えてしまえばいいと、想う。
私の生まれた土地や
育った街や
愛した人の記憶からも
消えてしまいたいと、想う。
私の両腕を離さない、
残酷な記憶たちから
逃れたいと願う。
だから私は、
ひたすら歩いて、歩いて
疲れて疲れ果てて、
そして眠ろうとする。
でも「眠り」は、
私を休めようとしない。










SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送